廣岡は1963年に設立。エバグリーン廣甚とともにグループとして、ドラッグストア「エバグリーン」21店舗、食品スーパーマーケット「スーパーエバグリーン」10店舗を中心にコンビニや飲食店も含めて計40店舗を近畿地方に展開する。この10年で店舗数は約2.2倍、売上高は約3.1倍になるなど、大きな成長を遂げた。
そして事業の拡大とともにシステム改革を推進、業界標準に沿ったEDI(Electronic Data Interchange:電子商取引 )システムの導入も進めてきた。従来、紙を使用して行われていた発注や仕入れなどをシステム上で処理するEDIでは、ペーパーレスで業務を行うことが原則だ。そして、ペーパーレス化によって発注や仕入れの手間が大幅に削減されたほとんどの部門の現場からEDIは歓迎された。しかし、「紙伝票も依然として残っており、本部で行うその入力業務が大きな懸案となっていました」と話すのは管理本部・業務改革システム室で課長を務める月井宗志氏だ。
紙伝票が残った主な理由は、もともと発注や仕入れに手間がかからずEDIの恩恵を実感しにくい一部の部門から従来どおり紙を使用し続けたいという要望があり、それに応えたからだ。「現場を実際に仕切っている各部門の担当者の意見を無視することは、『現場主義』の当社の理念にも反してしまうことになります」と月井課長はその真意を明かす。
しかし、それには大きな問題とリスクを抱えていた。さまざまな種類がある伝票に記載された数多くの項目をシステムに入力する業務は、各伝票の見方を理解したうえで素早く正確に入力できる「熟練者」でなければできない仕事だ。それを、本部の取引処理に携わるパート全員が担当して伝票が来るたびに入力を行い、なんとか決済期限までに間に合わせるような状況だった。
そのため、月井課長は「パートさんが体調を崩したり、お子さんの都合などで急に休んだりしてしまったら、対処ができるだろうか」と不安をいつも抱えていたというのだ。支払いに関する一連の処理は企業の信用に大きく関わるものだからこそ、その不安も大きかったという。
現場が要望する紙のやりとりは残しつつも、仕入れ伝票入力業務の現状を変えることはできないかとその方法を模索するなか、販売代理店からOCRで文字の読み取りができる小型で安価なスキャナーとして紹介されたのがコダックスキャナーだった。
ひと目で伝票入力業務に使えると思った月井課長は「それから、ネットなどさまざまな情報を集めてみましたが、他社製品は何百万もする非常に高額なものばかりでした」と早々にコダックスキャナーに絞って検討することにした。コダックスキャナーは小型で安価でありながら、伝票のように薄い紙でも連続して送り出せる「薄紙搬送」機能など、業務に必要な機能を十分に備えていたことも検討に迷わなかった一因だという。
そのなかで候補はオフィス向けのi3000シリーズのi3200とi3400スキャナー(以下i3400)。使用している伝票サイズであれば、1分間にi3200は50枚、i3400は100枚を読み込める(A4では各々50枚、90枚)。それに対し「1分間に100枚を読み込んでもその後の処理が追いつかないので、50枚で十分と思いました」(月井課長)とコストパフォーマンスの点も併せて、i3200の導入を決定。結局、検討期間は製品を知ってから数か月足らず。2015年の春先にテストを開始、8月には本格稼働を開始した。
導入後の業務フローではまず、印字された紙伝票をスキャンする。スキャナーは初期設定された伝票フォーマットに基づき、項目ごとに文字を読み込んでいく。次に担当者は読み込んだ内容をそのイメージのままプレビュー画面で確認し伝票と見比べ、もし読み込んだ内容に誤りがある場合は、読み込み内容の修正を行う。さらに生成されたCSV(文字だけの情報)データを画面上でチェックして同様に誤りがあれば修正を行い、内容を確定。
このように画面上で二重チェックすることで、処理の正確性を担保している。「紙を出力せずにチェックと修正ができるプレビュー機能は、パートさんからも好評です」(月井課長)と使い勝手の評判も良いという。こうして五月雨で常に行っていた印字紙伝票の入力業務の三分の一を、現在は1人の担当者が閑散期に集中して担うようになった。それ以外の担当は伝票仕訳や請求書チェックなど、ほかの業務に集中している
月井課長は現状について「以前は、期限間際に残業をお願いしていたくらいでしたが、いまは入力担当の人数を1人減らしたにもかかわらず、余裕をもって業務を終わらせることができています」と、業務効率の向上とそれに伴うコストダウンを評価する。
さらに、「教育を受けて経験を積んだ熟練者でなくても、伝票入力業務ができるようになったことが大きい。実際、熟練のパートさんが1人で1日に処理していた伝票枚数の3倍の量を、業務に慣れていない者でも代わりに処理できるようになりました」と誰でも業務ができる面を高く評価する。以前は常に心配していた担当者の休みに対しても、いまは大きな不安は感じていないという。人手不足感の強い現場にとっては見逃せない効果と言えそうだ。
システム改革の今後の展望に関して月井課長は「じつは私が目指しているのは完全EDI化と完全ペーパーレス化。スキャナーはその間の経過措置だと考えています」と明かす。システム担当として紙伝票を残さずすべてEDI化をすることこそ、効率や費用の面でも悲願だというのだ。それでも「スキャナー導入の判断は正しかった」と月井課長は断言し、次のようにその理由を説明する。
「スキャナー導入によって本部の伝票入力業務の担当を1人削減できています。また、完全EDI化には少なくとも1年以上はかかる見込みです。そして、パートさん1人にかかる1年間の費用より、i3200の価格のほうが安い。つまり、もとがとれているということです」。
製品を導入しない場合にかかるコストと製品価格を冷静に比べるという月井課長の判断基準は、自社で導入を検討しようとする際に有効な観点になるだろう。 さらに、「総務部などでは紙の処理業務がまだ残っています。そういった分野でもスキャナーを利用したいと考えています」(月井課長)と完全EDI化後のスキャナー活用にも前向きだ。そして、今後はコダック アラリスが提供するインストレーションサービスを利用し、伝票フォーマットの初期設定を自分たちで行えるよう、期待を寄せる。
EDI化の途上で業務改善の現実解として選ばれたコダックスキャナーだが、完全EDI化の悲願がなったあかつきにも違った役割で大いに活躍しそうだ。
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